彼女は心に愛を飼っているらしい



「私にとっては常識の範囲内だったわ」


本当にそうだったんだろうな。
僕は何度目かのため息をつくと、視線を彼女に移した。


彼女にとっての常識と、先生にとっての常識はかけ離れて過ぎていた。

それはきっとこれから先、彼女がどう真剣に伝えようとも理解出来ないくらいだろう。


そもそもそんなこと、理解なんてされるわけないのだから、しっかりとした現実味ある夢を書いておけば良かったのだ。


それなのに。彼女はいつまで経っても分からない。


「だいたいキミはさ、そんなに熱い夢を持ってるようだけど、それを追いかけて何になるの?」

「何ってなに?」

「だから、今キミがやっていることが形になると思っているのかってことだよ」

「何かにならなきゃ、やっちゃダメなの?やりたいからやる。やっていて、楽しい。それだけで幸せじゃない」

「幼い考えだな」


普段ならここで終わるはずの言い合いに彼女はひとこと言葉を添えた。


「キミの方が幼いよ。引かれた道しか歩けない。まるで子どもみたいね」


それはケンカ腰で、彼女にしては少し強い物言いだった。


自分の夢を否定されたことが相当嫌だったのだろうか。






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