彼女は心に愛を飼っているらしい
しかし、僕がじっと彼女を見るとバツが悪くなったのか、とたんに目を逸らした。
だって……そうじゃん。とよわよわしい声をつけて。
「大人になったら自分の道を自分で選ぶよ」
「ウソ。キミは絶対選ばないよ。このままじゃ今のまま。ずーっとね」
「そんなの分からないじゃないか」
「分かるよ、そういうものだもん」
何を知ってそういうのか僕には分からない。キミは占い師でもあるまいし。
なんて伝えたいくらいだったけど、今回はなんだか僕の方が言い聞かされてしまったような気がした。
はあっと深いため息をつくと僕はカバンを持ち直して歩き出す。
「ちょ……っ!帰るの?」
その言葉に返事はせずにスタスタと歩いていく。
引かれた道を歩き続けた男の末路はどうなるのだろう。
一生その道に縋って生きていくのか、それともどこかで踏み出してみようと思うのだろうか。
僕の将来、大人になって自分ひとりで生きていけるとして、用意された道を捨ててまで自分の道を切り開いていこうと思えるのだろうか。
分からない。
少なくとも今は、彼女の言葉の方が正しいのかもしれない。
僕の将来そういうもの、で片付けられるのは悲しいけれどそういうものじゃない、と言い返せる自分がいない限り、僕はずっとこのままだーー。