彼女は心に愛を飼っているらしい
運動は苦手だ。参加しなくていいのであれば、家で勉強しているのに、ご丁寧にひとりひと種目は強制参加、だとかクラスのみんなで力を合わせて頑張りましょう!だとか、そんなことをうたい文句のように教師が言うから、逃げることも出来ず、参加する羽目になってしまった。
本当に迷惑だと思う。
僕の走りを見て笑われるのは目に見えている。
いや、笑われているだけならまだいい。
全員リレーなんてもっと悲惨だ。運動が得意で気合の入ったクラスメイトには決まってアイツのせいで、と言われるのだから。
「ハードルなんてぶつかってばかりだし、クラスリレーはめちゃくちゃ遅いし、ちょっと笑っちゃった」
「うるさいな、どうせ将来には活きてこないんだ。別にいいだろう」
「分からないよ?将来のキミは運動音痴だったばっかりにすぐによぼよぼのおじいさんになってしまうかもしれない」
彼女はわざとらしく両手を使って目じりをぐっと、下に引っ張ると、おじいさんのような仕草をしながら言った。
「得点、赤組に15点入れて」
僕はその言葉を無視して彼女に指示を出す。
これで僕達のクラスが属する白組が負けたら、ほとぼり覚めるまでお前のせいで、と言われ続けるのだろう。
きっと白い目を向けられながら。
まぁ、いいけど。こういうのは慣れてるし。