彼女は心に愛を飼っているらしい
「ケチだなぁ、帰り道だよ?」
「あのさ、毎日毎日誘ってくるのやめてくれる?」
彼女は相変わらず僕に話しかけては、引っ付いてくる。
そんな彼女の気まぐれに時々付き合ったりしている僕も悪いのだけど、味をしめたとばかりに色んなことを提案してきては強引に誘ってくるのはやめて欲しい。
「毎日じゃないならいいの?じゃあ今日はやめる。でもまた明日誘うわ」
ほら、こういうところ。
本当にうんざりしてしまう。
彼女が作った“打ち上げ”という行事に参加してから、僕達の関係は少しばかり変わったように思う。
彼女は今まで以上に僕に話しかけるようになったし、遠慮がない。
いや、遠慮がないのは元からか。
もっとも彼女がしていることは変わらないのだけど、まるで自分が誘ったら来てくれるだろうと信じてるみたいな顔が気に入らない。
一方僕は僕で彼女が心に触れるたび、どこか清々しい風が吹き抜けていくそれを少し心地いいと思うようになった。
それを彼女に伝えたら、きっとキミの飼っている愛が育っていってるのね、なんて変なことを言われそうなので、絶対に言わないけど、感情というのは時が経つにつれなんらかの変化をするんだな、と内心で思った。