彼女は心に愛を飼っているらしい
チク、タクと音を立てて鳴る時計の針が妙に耳について離れない。
刻々と過ぎる時間を視界に入れながら、僕は気にしていないんだと、無理やりペンを動かしていた。
日曜日ー。
いつもの時間に起きて朝ごはんを食べ、勉強をする。いつも通りの休日のはずだった。
ーー彼女があんな言葉を放たなければ。
『日曜日は11時に駅前で。待ってるから、来るまでずっーと!』
日曜日、11時、駅前。
その単語は約束の時間に近づくたび、鮮明に頭を巡る。
今日も家には誰もいない。慣れきったようにポツンと置かれたお札と変化が見られない観葉植物が何ひとつ変わらず置かれているだけだ。
何も変わらない日常。
それなのに、同じリズムで音を刻む時計が煩わしくて仕方なかった。
……ダメだ、集中出来ない。
僕がそれを認めたのは10時半を回った時だった。
ついに耐え切れなくなってイスから立ち上がると、クローゼットから外行きの服を引っ張り出して、それを着る。
そして近くにあったリュックを背負うと、僕はリビングの机に置かれたお札をぐしゃっと握り、それをそのままポケットに入れて、家を出た。