彼女は心に愛を飼っているらしい
足早に彼女が指定した駅前まで向かう。
走れば走った分だけ当たる風が僕の外出の理由を作ってくれるような気がして、スピードを速めた。
そうだな。
理由をつけるならば、キブンテンカンだ。
朝起きて何故だか集中出来なかったから、外の空気を吸いに行く。海まで。
いや、海まではおかしいな。じゃあ海に行く理由は何にしよう。
そんなことを考えていた時、噴水の縁に座って足をぶらぶらと揺らしている彼女が見えた。
ゆっくりとスピードを緩め、彼女に近づいていけば、その途中で彼女が気づく。
「やっぱり来てくれたのね」
立ち上がると同時に嬉しそうな顔して言葉を放つ彼女はいつも見る制服姿では無かった。
カジュアルなシャツに無地のデニム。決して着飾った格好ではないけれど、普段よりも彼女が大人っぽく見えて、僕は咄嗟に目を逸らした。
「何時までも待ってようと思ったけど、まだ15分。もう少し待ってても良かったくらいよ」
「ずっと待たれて、後々僕のせいにされたらたまったもんじゃないからね。早く来てあげたんだよ」
「あら、初めから来るつもりだったのね」
その皮肉にも取れる言葉に僕は黙り込む。
すると、彼女は眩しいくらいの笑顔で言って来た。