彼女は心に愛を飼っているらしい
その日の帰り道。
僕たちが会話をすることはほとんど無かった。
彼女が一方的に話すわけでもなく、僕が何かをつぶやくわけもなく、ただじっと2人揃って電車の椅子に座っている。
ぴたりとはまったように動かなかった僕たちは、お互いに何かを考えていたと思う。
それはお互いが分かれる場所に着くまでずっと。
「じゃあ、また明日ね」
「ああ」
いつもと同じ紙切れを初めて晩御飯以外のものに引き換えて出た旅は、僕を形容し難い気持ちにさせた。
手元には何もないのに、心にはいっぱいの景色が広がっているそれを、なんと表現するのが正解なんだろう。
「キレイだ……」
暗くなった夜道。
僕は柄にも無く星空を見上げた。
この道の星がこんなにもキレイだということに、今まで一度も気づけなかった。
いつも下を向き必死に白い線を探してはなぞって歩いていたからだ。
きっといつだってきらきら光っていたのに。下ばかり見て、どうせ見えないなんて言っていたのだろう。
上を見るのも、下を見るのも自分が決めるんだ。
そう、自分が。