彼女は心に愛を飼っているらしい
「じゃあ私たち、どんな関係なの?」
「僕に付きまとうストーカー?」
僕が聞き返すように言うと、彼女は怒った。
「そんなのひどい。あんまりじゃない!
私が誘った誘いにちゃんと来てくれたんだし、それは絶対違うわ」
「あんなのは気まぐれだよ」
僕のつぶやきを聞いたのか、それとも聞いていないのか、彼女はさっきまでの怒りもけろり、と忘れたかのように言った。
「ねぇ!そういえばさ、昨日家に帰った後何か変わったことはあった?」
「さぁ、ないけど……」
「本当に?変わったこと、気持ちの変化とか」
期待するような瞳で見つめられるのは苦手だ。とっさに視線を逸らしながら僕は答えた。
「ないよ、」
「私はあったわ。心の中がすうって気持ちよくなって、家の中でも歌い続けたの。そしたらぺトラテスに怒られちゃった」
「ぺトラテス?」
聞きなれない名前に僕がオウム返しすると、彼女はよく聞いてくれた、みたいな顔をして胸を張りながら答えた。
「私の飼っている犬の名前。とっても可愛いの」
ペトラテス……珍しい名前だな。
「キミは犬は好き?」
「別にどっちでもない」