彼女は心に愛を飼っているらしい
「こんにちは、来ちゃった!」
「…………」
僕が眉をひそめるのを間近で見ても、彼女の表 情は変わらず笑顔を浮かべる。
そんな彼女を見て、無言でドアを閉めようとすると、彼女は慌てて声をかけた。
「あっ……!ちょっと待って!」
「……あのさあ、本当にキミって変わったことするよね」
「よく言われる」
「それって皮肉だってことに気づいた方がいいよ。キミにかける変わってる、は褒め言葉じゃないから」
「もしかして怒ってる?」
「いや、どっちかというと呆れてる」
「ごめん。ふとキミのことを考えたらさ、いてもたってもいられなくて」
「いてもたってもいられないからって普通押しかけて来ないだろ
家に押しかけてくる人がいるって通報するよ」
「勝手になんて入らないわ。ちゃんとキミがいいって言ってくれるまで待つわよ」
そういう問題じゃないだろう……。
僕は再び深いため息をついた。
この彼女を追い返す方法は果たして存在するのだろうか。
「ちゃんとね、お茶菓子持ってきたの。ここのシフォンケーキは美味しいからぜひキミにも食べてもらいたいんだ」
僕はしかめ面のまま、諦めたように彼女に「入れば」と伝えて中へ招いた。