彼女は心に愛を飼っているらしい
それは彼女が言った通りふわふわしていて口いっぱいに甘さが広がった。普段甘いものはほとんど食べないけれど、久しぶりに食べたからか、甘いものはこんなに美味しいものだったか、と問いかける。
「どう?美味いでしょ?私はこれが大好きでね、学校から帰るといつも食べるの
キミにも食べて欲しいって思ってたからちょうど良かった」
美味しいや嬉しいを人と共有したがる彼女。
彼女はひとりの時も、ひとりではいないんだろう。
誰かのことを思い浮かべて、過ごしていく。
「やっぱり変なの、」
僕は小さくつぶやいた。
食べ終わって気づいたことは、シフォンケーキには紅茶がベストだったということ。何も考えずに入れてしまったコーヒーは一口目に食べた美味しさを半減させてしまった。
彼女はキレイにシフォンケーキを食べ、コーヒまで飲み干すと本題に入るかのように言う。
「さて」
めんどくさいことになるのは、彼女を家に入れた時から分かっていた。
彼女が僕の家に来た目的は僕の部屋を見たかったからでも、僕に美味しいシフォンケーキを食べさせたかったからでもない。
「見せて欲しいの、キミが描いた絵を」