キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】



「他のバンドのライブ、全部忘れさせるくらいのパフォーマンスするからさ」


星渚さんが、好戦的かつ自信に満ち溢れる表情で笑った。


「約束ね」


名残惜しそうに、ゆっくりと星渚さんから離れる菜流。まるでドラマのワンシーンだ。


主役はこの兄妹で私は通行人A、皐月も通行人Bといったところだろう。


「皐月、藍と碧音君に言っておいてね。楽しみにしてるって」


「はいはい」


皐月にお願いしておく。2人は列から遠ざかり、まだ関係者しか入れない会場へと戻って行った。


「入場まで後15分だよ。長かった!」


スマホに表示される時刻を確認。


「前の方に行って見れるようにパッパと動くからね」


気合い十分な声。それに笑いつつバッグの中を漁りペットボトルのお茶を見つけ出して、少しばかり温くなってしまったお茶を喉に流し入れる。


「菜流、ちょっと自販機でお茶買ってくる」



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