キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
碧音君は今も、待ってる。
「女の人には会えないってことだよね?」
「そうなるな」
「どのくらい、会えてないの?」
「どれくらい?正確には覚えてねえけど、1年半経ったっけ」
1年半?その数字に引っかかる。あれ、その時期って。色褪せていた記憶を取り出そうと頭の中の引き出しを色々開けていたら。
「俺が話せるのは、ここまでだ。あんま言うと碧音に怒られるからな」
「うん、ありがとう」
皐月も、人の事情を全てペラペラ喋る程遠慮がないわけではない。私に対する遠慮は一切持ち合わせていないけどね。
「昔を気にしたって、どうしようもねえだろ。碧音にも色々あんだよ」
「気になってしまうのが乙女心です」
「じゃあ捨てろ乙女心」
そこら辺のゴミを捨てるのと乙女心を捨てるのとじゃ大きな差があるのに、まるで同等だと言わんばかりにケッと吐き捨てた。