キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「年上の言葉は大切に受け取っておけよ」
「感謝します先輩!」
ピシッ!指先を伸ばし敬礼の真似。
「先輩に感謝するのは大事だ後輩」
椅子にふんぞり返り足を組む皐月。何でだろう、様になっていてからかえない。これだから顔の良い男は。
「うっわ。もう17時半じゃん」
皐月がふいに私の後ろに視線を逸らしたと思ったら、目を見開いた。私も釣られて振り返り、お洒落な時計で時刻を確認すると皐月の言う時間が示されていて。
「じゃーそろそろ帰るか」
「長居しちゃったね」
空になったカップを手に取りごみ箱に捨てて、快適な空間から蒸し暑い外に出た。
あの抹茶ラテ、私がお金を出そうと思ったら皐月が払ってくれたのだ。
付き合ってるフリしてるんだから彼氏の俺が払うに決まってんだろ、と皐月は話していたけれど。
別にそうじゃなくても、皐月は何てことないように奢ってくれるんだろうなあ。敵わない。
「俺、今日は電車」
「私も電車」
「この時間の電車、混むんだよなー」
「帰宅ラッシュにハマっちゃうかも」
他愛ない会話をしつつ、駅へ向かう。空がほんのり淡く橙色から青色に変化していき、曇がその2色に染まってる。
前に碧音君と見たときの夕焼けの方が色彩豊かで、それでいて怖かった。
でも同時にあの不器用な優しさを思い出しながら前に足を進めた。