キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
美和ちゃんは今にも泣きそうな声で言うから本気で心配になってくる。
「私、部活で軽音に入ってるでしょ?それで今度の文化祭でライブすることになってたんだけど、同じバンドのギター担当の2年生が数日前骨折しちゃって」
何となく話が読めてきた。
「だから、代わりに刹那君に出て欲しいの!」
「……ぉお」
それはまた、なんというか。美和ちゃんにはガシッと肩を掴まれているから逃げ場がない。おしとやかな雰囲気とは真逆で結構腕力あるよね。
「うちの軽音人数少ないから皆自分の曲で手いっぱいだし、そもそもこんな急に新しい曲を仕上げられる部員もいないし……」
「文化祭までもうすぐだもんね」
「でも3年生の先輩にとっては最後のステージだし、ちゃんとした演奏にしたくて。誰かできる人はいないかって探し回ってたときに刹那君のことを聞いたの」
碧音君は歌だけでなくギターも上手だ。midnightではリードギターは藍だけど、碧音君も十分できる。
「刹那君ならリードギターも出来るって思ってる、明日歌ちゃんから刹那君にコンタクトとってもらえないかな?いきなり私が話かけても……無視される気がする」
「それは……残念ながら正解です」
誰でもいきなり話しかけられたらびっくりするだろうけど碧音君は絶対零度の視線を向けて終わりだから。
「うーん、分かった。会えないか聞いてみるね」