キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「……」
「嫌だけど、めっちゃ怖いけど1人で帰るしかないかぁ。でも怖いな」
「さよなら」
「違いますー!そうじゃないよね?ここは『しょうがないな、特別に送ってやるよ』って言われるシーンなんだよ漫画では」
なんの躊躇もなく帰ろうとした碧音君を引き留める。
「知るか」
折角か弱い女の子のふりしたのに、無駄だった。
「帰ろうよ!」
「さようなら」
「待って……っ」
碧音君に伸ばした手は虚しく空振りに終わり、無情にも去っていってしまった。
駅までは同じだけど、帰り道は反対方向のようだ。
やっぱり、マンガやドラマみたいに上手くはいかないのね。だんだん小さくなっていく背中から目を離して空を見上げる。
満点の星空。
なんだろう、これから毎日がもっと楽しくなる予感がした。