キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「私……、ごめんなさい」
危うく藍を怒らせて傷つけてしまうところだった。皐月が止めてくれて、良かった。
曲をチェックするために私の腕を掴んだのではなく、本当は藍の元へ不用意に行かせないために。
「分かったらパターン選びすんぞ」
「うん」
星渚さんも碧音君も皐月も、人との距離のおき方を知ってる。見習わなきゃいけない、私は。
反省しながら皆と曲の幾つかのパターンを聞いていると休憩室のドアがギギィ、音をたてて開いた。
「なんだ、もう練習再開してると思ったのに」
「今曲の構成決めてるよー。藍も聞く?」
「聞かせて」
星渚さんが碧音君側に寄り1人分座れるスペースを空ける。
電話していた時とはうって変わり、優しく穏やかな空気の藍。その様子を見て、私も変に意識せず普通にいようと決めた。
「俺、1番目のやつ」
全て聞き終わると碧音君が迷いなく即答。碧音君、こうなった時は絶対に意見変えないよね。
「俺も刹那と同じ。皐月は?」