キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「明日歌!こっち」
「な、なる!ごめんね。電車が遅れちゃって」
「まだ大丈夫。急ごう」
先週の放課後、友達の菜流に土曜日にアマチュアバンドが集まるライブがあるから一緒に行こうと誘われ、ライブハウスまでやって来た。
なんでも、菜流のお兄さんがバンドのドラムをやっていて、そのバンドが出演するんだとか。
時刻は夕方18時。
夏だからこの時間帯でも明るく、その下に派手な格好をしたバンドや観客の人達がたむろしている光景は、少し違和感を感じさせる。
「いっぱい人来てるね。なんか緊張してきた……」
「だーいじょうぶ。中学生だって観に来てる子いるよ?」
「すごいな!」
中学生で来ちゃうなんて、大人。でも、このライブがそれだけ幅広い年齢層にウケているわけだ。
螺旋階段を降りるとチケットを回収するスタッフがいて、更に奥に進むと会場に着いた。
周りは既に人で溢れていて、間を上手くすり抜けながら真ん中の位置を確保。
ステージと大分近いんだな。
立ち見の形式で、薄暗い照明が雰囲気を演出し皆の気分を高揚させている。