キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
そうは言ったって、何の考えもなしに軽い気持ちで藍がこんな話するとは思えない。
文化祭に来てくれたときもいつもと変わらなかったし、数日前も皆と笑ってたのにどうして。
「私、藍を追いかける。探す」
「どこを」
「藍が行きそうな場所。電話かメールもしてみる」
プリンのバッグを雑に足元のローテーブルにおき乱暴にドアを開け廊下へ出た。
「待てよ」
「待てない」
「お前、星渚に言われたよな」
教えられた日の記憶は新しい。藍は自分のテリトリーに他人を簡単に入れないと。
「覚えてるよ」
「なら今どうするべきか分かんだろ。追うっていう選択肢はない」
「だけどっ、本当に辞めるって言ったらどうするの!?」
「今はただ気の迷いで言った可能性の方が高い」
私と碧音君の声が廊下に響く。スタジオを利用してる他の人に会話は丸聞こえだけど、それは別にいい。