キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「暫く来られない、そう言ったとき心の中では引き止めて欲しかったかもよ?」
「お前の憶測。変な正義感で行動すんな」
抑揚のない声色で、静かに言葉を紡ぐ。私とは正反対だ。
「自分を知らないやつに慰められたって、何とも思わない」
「言ってみないと分からないよ」
「ただの自己満足。助けに行って相手を理解したような言葉並べて、救った気分に浸る。満足だよな、自分は」
「…………っ」
碧音君が初めて露骨に出した怒りのような、それでいて切なさを含んだ感情が、胸に突き刺さった。痛い。
「俺達だって藍を心配してないんじゃない。けど藍の性格を理解してるからお前みたいな行動はとらない」
「――――私は」
歪む青みがかった灰色の双眸と、しっかり目を合わせる。
「やっぱり、藍が悩んでるって、苦しんでるって知ってるのに見てるだけなんて出来ない。1人で答えを出せないなら、誰かが手を伸ばしてあげないと」
手遅れになる前に。
「もし、この瞬間にも自分を犠牲にする答えを作り上げちゃったらどうするの?」