キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】



―――――――――

―――………



あいつが出ていった玄関を訳もなく眺める。


「何で、行かせたの」


「適任だと思ったからって、言ったじゃん」


「だからその理由を答えろ」


星渚の意図が俺には分からない。


口ぶりからすると、俺達の会話は影に隠れて聞いていたはず。なら、俺の言ったことも十分理解してるよな。


何で。


「今回は、刹那。感情的になっちゃったねぇ。得意のポーカーフェイスが崩れてるよ」


「なってない」


「嘘。あれは明日歌ちゃんに対して言った台詞じゃないでしょ?『相手を知った気になって助けようとする』って、さ」


「それは、どうでもいいだろ」


これ以上深く掘り下げるなと目で訴える。


星渚には『まーまあ、カッカしない』と肩を叩かれた。


「あれだけ藍のために動きたいって言ってんだから任せようよ。それに、俺は明日歌ちゃんに何とかしてもらうのがいいって直感で思った」


「直感とか」


「俺の勘は当たるじゃん」


< 208 / 579 >

この作品をシェア

pagetop