キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「ら、藍……どこ!」
光を反射して煌びやかな装飾を纏う澄んだ川、サワサワと吹く涼しい風に靡く緑の草、吸い込まれそうなほど青々とした空。
本来なら川岸の土手に座って景色を眺めるべきところだけど、今の私は情緒の欠片もなく全力疾走中。
この川岸は結構な距離があり、走れども簡単には終わりが見えない。
視界に入ってくるのは川の浅瀬で水遊びしてる小さな子供に散歩中の老夫婦。
マロンブラウンの彼が見つからないのだ。
「横っ腹が!」
手でお腹を撫でてもそれは気休めでしかなく。久しぶりに走ったから、体が悲鳴をあげ始めた。
今日はスニーカーだったのがせめてもの救いだよね。
ちょっと休憩、と誘惑を持ちかけてくるもう1人の自分を頭から追い出して更に走る。
走る前に携帯で電話したけど応答なし、メールもまだ返信がない。