キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
意図的に、なのかな。もしそうなら頼みの綱は自分の足しかないじゃないか。
タン、タン、タン、タン。
ひたすらコンクリートを蹴り続ける。
スタジオであれだけ碧音君に啖呵切ってきたんだ、諦めることは出来ない。しちゃいけない。
……碧音君に今後お前とは口きかないとか言われたらどうしよう、後で仲直りしたいな。
あの時の碧音君は、いつもの冷静さを失っていたように思う。私も、人のことは言えないんだけどさ。
「……ん?」
先にある橋の下に、誰かいる。藍?はたまた別人?
こちらからは判断し辛いので力を振り絞り走るペースを上げた。風が頬を撫で、髪を拐っていく。
「藍!」
マロンブラウンの髪にスタジオで会った時と同じ服装。間違いない、藍だ。
「藍っ」
「明日歌ちゃん……?」