キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】


意図的に、なのかな。もしそうなら頼みの綱は自分の足しかないじゃないか。


タン、タン、タン、タン。


ひたすらコンクリートを蹴り続ける。


スタジオであれだけ碧音君に啖呵切ってきたんだ、諦めることは出来ない。しちゃいけない。


……碧音君に今後お前とは口きかないとか言われたらどうしよう、後で仲直りしたいな。


あの時の碧音君は、いつもの冷静さを失っていたように思う。私も、人のことは言えないんだけどさ。


「……ん?」


先にある橋の下に、誰かいる。藍?はたまた別人?


こちらからは判断し辛いので力を振り絞り走るペースを上げた。風が頬を撫で、髪を拐っていく。


「藍!」


マロンブラウンの髪にスタジオで会った時と同じ服装。間違いない、藍だ。


「藍っ」


「明日歌ちゃん……?」


< 211 / 579 >

この作品をシェア

pagetop