キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
覚えてるかな、合宿で私が言った台詞。藍は頷いてくれたんだよ。
橋の下で男女2人でいたら周りの人はカップルで楽しそうだなあって思うかもしれないけど、甘い雰囲気とは程遠い。
「俺さ、苦手なんだ。自分のことを人に話すの」
藍の目線の先にいるのはバシャバシャ水音をたて遊ぶ幼い子供と、親。何か思うところがあるんだろう。
「人に話すのが苦手なら……んー……っ分かった!私を、人形だと思って」
「あ、明日歌ちゃん?」
「私を人形でもそこら辺に建ってる電柱とでも思って、話してみて」
ピクリとも動かず、目も閉じているから。物に話しかけるつもりで心の内を語るっていうのはどうかな?
「面白いこと考えるな」
「藍の気持ちを楽にするためだったら何でもする」
不器用なりに、必死だよ。
「藍」
「……」
私が人形や電柱のフリをする方法がダメなら、他に何がある?グルグル考えを巡らせていると。
「ふっ。電柱って!ははっ、人が電柱のフリするのは無理があるでしょ。ずっと立ってるの?」
藍がお腹を抱えて笑っていた。え、遅くない?タイムラグあるよね?
ていうか私は真剣なんだけど。笑いをとりたくて提案したのではない。