キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「あー、おっかし」
「そんなに笑わなくても」
「発想が面白い」
褒めてるのか貶してるのか、どっちだ。藍は一頻り笑った後目尻を指で拭った。
「……電柱のフリじゃなくて、人形のフリして」
「え?」
「早くフリしてくれないと、俺が話せないよ」
藍は打ち明けてくれるみたいだ、理由を。一緒に考えて答えを出す許可を出してくれたのだ。それならばと姿勢を正して目を瞑る。
「俺、さ。実は――――……」
藍が初めて自分を語ってくれたのは、夏から秋に変わろうとする風が吹く、そんな午後のことだった。