キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
弟は満足気に頷いてテーブルに戻り、またせっせとクレヨンで絵を描き始める。
ああ、クレヨンバラバラじゃん。散らかすと片付けが困るだろ?
「ゆーいーと。クレヨン」
浅く長い箱に1本1本戻す。普通はお母さんが『ちゃんと片付けなきゃダメでしょう』って怒るはず。
だって学校の先生も片付けをキチンとやらなければ生徒に注意するから。
でもうちのお母さんは言わない。何をしようと興味がないらしい。
「俺、遊びに行ってくるから」
「あそぶ?」
「友達と遊んでくる」
もしも結人にランドセルに落書きされたら嫌だ、離れたところに置いておく。
お母さんにも言うと『そう。遅くならないように』洗濯物に視線を落としたまま。行ってらっしゃい、って言って欲しいんだけど。
不満でモヤモヤしつつ、靴に足を入れて友達が待つ学校へと駆け出した。
毎日ほぼ仲の良い友達と放課後に公園や学校で遊んで過ごす。家にいてもつまらないから。
いつからだっけ、家にいるより外にいる方が楽しいと思い始めたのは。
「鬼ごっこしようぜ!」
「ええー!かくれんぼ、かくれんぼ」
「鬼ごっこやった後にかくれんぼやろうよ」