キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】


ギュウッ、手を握り締めて頭をだらんと下げる。


「……はあ」


「お、お母さん」


「いいんじゃない、別に」


特に咎められることもなくプリントを返され、逆に驚く。それだけ?


―――瞬間、テスト用紙が無価値なものに見えてしまった。怒られもせず次は頑張りなさいとも言われない。


落ち込んでいた自分がバカバカしい。放心状態で自分の部屋に戻り、ベッドに丸くなる。


「どうでもいいんだ」


俺のこと、本当に。家族だろ、俺達。家族ってこういうもんだっけ?


ご飯だって作ってくれるし欲しい物があると言えば買ってくれる、遊園地に行きたいと駄々を捏ねればたまーにそこにも連れていってくれる。


……でもそれは、全部全部自分から頼んだら、の話。


お母さんやお父さんから行こうと言ってくれたことは記憶にない。


それに例え遊園地に行っても連れてきてくれた本人のお母さん達が笑ってない、というか楽しんでなさそうで。


ああ、大人だから遊園地は面白くないからなのかも。……じゃあ、仕方がない?

< 220 / 579 >

この作品をシェア

pagetop