キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
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6限の授業とそのあとの掃除も終わらせて、帰りの支度をする。菜流は『星渚と買い物するんだ』と言って先に帰ってしまったから一人だ。
たくさんの人が行き来する廊下を歩いて玄関へ向かう、と。
「お?」
黒髪に線の細い体つき。間違いない。
「碧音君!」
「っ……げ」
振り向いてくれた彼は、また会ったよ、って嫌そうな顔をする。でも無視するんじゃなくて立ち止まってくれた。
こういうとこが碧音君なんだなって思う。
「碧音君も帰り?今日もバンドの練習?」
「直帰」
「なら一緒に帰れるね」
「一緒に帰る約束した覚えないけど」
「そう言わずに。靴に履き替えてくるね、私下駄箱あっちなんだ」