キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】



――――――――――


――――……



6限の授業とそのあとの掃除も終わらせて、帰りの支度をする。菜流は『星渚と買い物するんだ』と言って先に帰ってしまったから一人だ。


たくさんの人が行き来する廊下を歩いて玄関へ向かう、と。


「お?」


黒髪に線の細い体つき。間違いない。


「碧音君!」


「っ……げ」


振り向いてくれた彼は、また会ったよ、って嫌そうな顔をする。でも無視するんじゃなくて立ち止まってくれた。


こういうとこが碧音君なんだなって思う。


「碧音君も帰り?今日もバンドの練習?」


「直帰」


「なら一緒に帰れるね」


「一緒に帰る約束した覚えないけど」


「そう言わずに。靴に履き替えてくるね、私下駄箱あっちなんだ」

< 23 / 579 >

この作品をシェア

pagetop