キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】





—――付き合い始めてからしばらく経った頃。


「さあ!何か新しい変化はありましたか」


「……ない、無理だった」


注文したアイスカフェオレを口に含み、眉根を寄せた。


「根気がいるね」


春はこのカフェで人気だというチョコケーキにグサリ、フォークを刺す。


飲み物にアイスココアを頼むあたり、春の味覚は大丈夫かと心配になる。見てるこっちの口内が甘くなってきた。


「挨拶はさ、すると返してくれる。毎回めっちゃびっくりした顔で」


「何年もろくに挨拶してこなかった子供が言ってきたからだよ」


春と付き合う時に、お互い隠し事はなしにしようと約束したのだ。


それでちょうどいい機会だしいつかは気づかれると思い、家のことを話した。


春はこのままずっとずっと年月が過ぎてしまうのは切ないと、俺に家族の関係を修復するべきだと説得してきたけど、いきなり俺の気持ちも変わるはずもなく。


『俺は春がいたら幸せ』と言ったら、それは違うと抱き締められたのを覚えている。


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