キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】

彼女に気づかされ、考えも少しずつ変わっていって。


まずは基本の挨拶からやってみようということになり、現在実施中。ただいまと言ったら、前とは異なり俺の顔を見て返事をしてくれる。


「どんな話題でもいいから会話が続くといいんだけど」


「いざ話しかけるとぎこちなくなって、一言二言で終わる」


「次は頑張って5回言葉のキャッチボールしてみよう」


一歩一歩が小さくて道のりは長そうだけど、お父さんとお母さんとはこれでも良くなってきてる。


「それで、弟君は」


「……まだ」


「焦らず、やっていこうね」


春の細い指が、やんわり俺のそれに絡まった。慰められてる。


「話したくても、家にいないからさ」


「昔の藍よりも家出少年だ」


俺も中学の時はわざと帰りの時間を遅くしたり休日もブラブラ外を出歩いていた。でも結人は俺以上に酷い。


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