キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「ただいまは?」
「……」
苛ついた表情も見せず、グラスに水を注ぎ飲みほすとすぐに2階へ行こうとする。ここで引き下がっては、結人との距離が縮まらない。
「待てって」
控え目に制服のYシャツの袖を引っ張った。
「……結人?」
引っ張った反動で必然的に振り返った結人の顔が、青白かった。
「邪魔」
僅かに顔を歪め、言葉を落とす。
「お前、顔色悪いよ?」
「………」
血の気を失っていて、やつれている。まともに食事も睡眠も摂っていなかったのか。
調子悪いのが一発で分かった。
「手」
鋭く光る目が『その手を離せ』と語っている。でも放したらお前、自分の体の状態なんか気にせず無茶するだろ。