キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「楽な体勢になれるように場所を変えるために手を貸したら、払い除けられた」
拒絶された、と。でも弟君ならやりかねない。
「顔のケガはその後階段で、ちょっとね」
重要なことではない付け加えのように、言う。
「ああいう時にさえ頼れなくさせた、俺が。結人を追い詰めたのも」
「藍1人のせいじゃ、ないよ」
藍が1人で家族を壊したわけでもないし、弟君を追い詰めたって言うけど藍だけが責任を背負う必要はないから。
背中に手を回して体を引き寄せる。
Yシャツの香りは甘ったるい香水の代わりに、ほのかな洗剤の香りになっていて。
「人の気持ちは、そう簡単に変わらないよね。例えば嫌いなものを好きになったり、苦手なことを克服するのにも時間が必要だもん。……これからも弟君とは今回みたいなことが続くと思う」
「覚悟してる」
覚悟していても、時々心が痛んでしまうのは仕方ないのだ。