キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】



「秘密」


「えー、秘密?」


「ん。まだ教えない」


「あはは、まだダメ……、か」


何気なく見上げた空の色に言葉に詰まった。


夕焼け空の燃えるような紅色が紫色や藍色にじわりじわりと侵食される様は、夜の闇に飲み込まれていく合図。


夕焼け雲は鮮やかな紅色なのに、空は淡い紫色というのが不気味だ。


今日はイヤな色だな。


夕暮れは綺麗で好きだと言う人がいるけれど、私は怖くなる。


小さい頃から、そうだった。


静かに足音立てず後ろから迫る闇に、自分も一緒に飲み込まれてしまうような、感覚。


いつもこういう空なわけじゃないし最近は特にそうだったから気を抜いていた。


苦手、何故だか胸がざわついて不安に駆られるから。子供じみてるのは分かっていても。


「――――い、な」


ああ、嫌だな。


「橘」


「っ、え、あ。ごめん!」


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