キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
この時期くらいに星渚達とバンドを組んだ。順調に歯車が回りだして、自分の世界が広がっていく感覚。
残された高校生活も充実して過ごすことが出来て、やっと未来に光が射し始めたと思っていたけれど。
―――大学1年の冬。
「あれ、ぼやける」
「貸して。俺が読む」
春から参考書を受け取り、開かれているページの内容を読み上げた。
「やっぱ眼鏡するべきなのかなあ」
ベッドにボフッとダイブし、高校の時より長くなった黒髪を枕に散らす。
「目が疲れたよ~」
グリグリ顔を枕に押しつけ『藍の匂いだ』とふにゃり、頬を緩ませる。こうなってはもう勉強する気は失せたんだろう。
分からないところがあるから教えてと俺の家に来たのは春だろ。
「どのくらい見えなくなった?細かい字が見え辛くなる以外は?」
「遠くもぼやけて見えないんだ。大学の講義も1番前に座って受けてるんだよ」