キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
【光を求めて】
「俺が最近練習に行けなかったのは、ちょうど手術の話をされたんだ。それで春と揉めてて。成功率の極端に低い手術ではないんだけど、失敗すると完全に失明」
夏と秋の間の、なんとも言えない空を仰ぎながら藍は話を続ける。
「春は失明するって可能性があるなら受けたくないって言ってる。その気持ちは春を見てきて痛いほど分かるから」
藍の声が、震えた。
「俺も失明したらって考えると怖い。でも助かる道も1つしかない」
きっと他人は『それなら、絶対手術は受けなきゃ!』と軽々しく言えてしまうんだろう。でも本人や藍はそうじゃないんだ。
「色んな考えが浮かんできて悩んでて、バンドの練習に集中出来なくなってた。だから、春のことがどうにかなるまで中途半端にやらない方がいいと思ってさ」
辞めるとハッキリ言えなかったのは、彼女との約束があるから。
藍の話を聞いて、ああこれで全部繋がったと思った。
結人さんは何故藍に冷たい態度をとっていたのかも。
合宿の時たまたま2人で言い合っていたところを目撃した時結人さんが言った『あの女のところに行ってれば』あの女とは、波江春さんだったということも。