キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
藍は波江さんの笑顔が春みたいに穏やかと言っていたけど、藍の笑顔も同じくらい相手を癒してくれる。
その笑顔の裏に隠されていた想いや経験は、深くて重いもので。
それでも藍は耐えて耐えて、前に進んだ。
崩れ落ちて立ち上がるのにどれ程の力が必要だったんだろう、どれくらい歯を食いしばって歩いてきたんだろう。
抱えるものが、多過ぎるよ。藍だって抱えているものがあるのに、他人優先で自分は後回し。
過去の経験が、そうさせるのかもしれないね。
「俺は……っどうすれば」
悲痛にまみれた叫びだった。
光を失う怖さを藍も波江さんも分かっているからこそ、踏み出せない。
光を完全に失った波江さんが壊れてしまうんじゃないかって、心配なんだと思う。
闇しか見えなくなるなんて。