キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
橘、そう碧音君に呼ばれ我に返る。
いけない、思考がトリップして気づけなかった。
「ボケっとしてんなよ」
「ごめん、考え事してて」
折角碧音君といるのに、何たる失態。ていうか、碧音君にちゃんと名前で呼ばれたの初めて。正しくは苗字だが気にしない。
「お前って、黙ること出来たんだな」
「心底感心したみたいに言わないで」
はははっ、笑って突っ込む。
「ごめんね何の話だっけ?碧音君から柑橘系のいい香りがするって話?あ、今日も色気が漂ってるねって話?」
「……お前さ」
「うん?」
視線は碧音君に向けないまま。
「変」
「それは碧音君が魅力的だからだよ」
夕焼け嫌だなあ、と思ってしまう思考を変えようと別の話題でも見つけて碧音君に話そうとするも、余計気になってくる。
「…………」
「――――……っ、あ、おい君」
びっくりして碧音君を見ると、少し戸惑っているのか揺れる灰色で青みがかった瞳と目が合う。