キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
碧音君の手が、遠慮がちに頭の上にぽん、乗せられた。
“優しくふんわりと包み込むように”というよりはまるで、“本当に触れてもいいのか”迷っている感じ。
ほんのちょっと、重みが分かる程度に手がぽんぽん弾む。
碧音君、もしかしなくてもこれってさ。
「……大丈夫」
ただ大丈夫と言って、控え目に頭に手をぽんと置く。
これって、慰めてくれてるの?
碧音君は多分、こういう事をやり慣れてないのだろう。不器用でぎこちない。
でも、安心する。
「ありがとう、碧音君」
「ん」
「私夕焼けが苦手なんだよね。小さい頃からずっと、今も。高校生にもなって恥ずかしいなー」
「誰にでも、あるだろ。苦手なもの」
そう口にした碧音君は、わずかに眉を下げた。碧音君にこういう表情をさせる何かがあるってことだろうか。
「だから別に気にしなくていい」
「ありがとう」
「ん」
初めて触れる、碧音君の優しさ。
帰り道、ずっと頭の上には碧音君の不器用な優しさの感触が残っていた。