キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
【それはまるで春のような】
太陽が沈み、街に明かりが灯され始めた頃ライブハウスに到着。
ライブ開始までには時間があるから、来ている人もそんなに多くはない。あと数十分もすれば入り口が人で溢れる。
プチ花火大会のときに皐月が言っていたライブが行われる日をどれだけ楽しみにしていたことか。それが今日。
ライブ自体も楽しみだけど、もしかしたら藍の大切な人、波江春さんに会えるからだ。
藍の話を聞く限り素敵な人なんだろうなとは思うけれど。
やはり実際会って色々話をしてみたい。はやる気持ちを抑えるために胸のあたりをトントン、叩く。
「よっ!変態」
「その挨拶の仕方を即刻止めるべきだ皐月!」
背後から耳に届いた何とも失礼な挨拶をしてくる野郎は皐月しかいない、と即座に判断し、皐月に持っていたバッグを投げつける。
「挨拶代わりにバッグ投げつけてくる女がいるかよ」
「くっ、取られた!」