キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】


「刹那碧音君って、ボーカルの子ですよね」


「そー。無愛想だけど機嫌が悪いわけじゃないから。仲良くしてやって」


「素でそういう奴なんすよ」


私と初対面の時も碧音君、表情変えなかったもんな。懐かしい。


「あれ碧音じゃね?」


皐月の目線を追うとライブハウスの出入口から人に紛れて出てくる1人の黒髪少年。


遠目からでも分かるくらいの色気を振りまいている。本人はそれに無自覚だけど。


「刹那、こっち」


星渚さんが手招きすると碧音君がこちらに気づきやって来た。


「初めまして、刹那君。波江春です」


「こちらこそ」


思った通り波江さんが来てくれたというのに別段驚いた顔もしない。


私なんて会えたことに対しての喜びで興奮気味の自分を落ち着かせるのに必死なんだぞ。


もー、波江さん相手には少しくらい笑ったらどうですか。


< 299 / 579 >

この作品をシェア

pagetop