キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「ね。明日歌ちゃんは、彼氏いるの?」
「いませんよ!私、女らしくないって言われますから」
特にいつもバカにしてくるあの2人に。自覚はあるんだけど。
「気になってる子は?……もしかして、刹那君?」
「なっ、何で分かったんですか?!」
「刹那君のことを見る目が違ってたから、かな」
波江さんがしたり顔で唇の端を持ち上げる。自分では気づかなかった、そんなこと。
「私で良かったら、相談にのるよ。伊達に明日歌ちゃんより長く生きてないからね」
「本当ですか。じゃあその時はよろしくお願いします」
お願いすれば波江さんは、雑然とした薄暗いライブ開場からそこだけ空間が切り取られたように。
まるで、春のような。暖かな微笑を口角に浮かべた。