キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「完全に名前負けだよな。明日に歌で明日歌、お前の性格と合わない」
「若干自分でも思いますけど、それは置いといて!明日歌か橘で呼んで下さい」
高瀬さんは『お前、苗字橘っつーの?』今更な質問をしてきて、殴りたくなった。
そのオシャレにセットされた髪型崩してさし上げましょうか。
「橘だと他人行儀だし、明日歌で」
「今度から変態はなしですよ?」
「明日歌が変態行動とるからだろ!」
「とってませんー」
誰だって碧音君を見たら言ってしまうのだ『鎖骨晒してください』と。不可抗力というやつ。
綺麗な鎖骨にある黒子が余計に色っぽく見せて、破壊力抜群。あれで同い年なんだからびっくりだ。
「ついでに、お前も俺のこと高瀬さんじゃなくて別の呼び方しろよ」
「でも一応……年上ですし」
「何で嫌そうなんだよ喧嘩売ってんのか」
「冗談です。皐月さん?」
「呼び捨て」
呼び捨て?いいのかな、年上だし会ってそこまで時間も経ってないのに。
「俺がそうしろってんだから、いいんだよ。苗字プラスさん付けって慣れねえ」
生暖かい風が柔らかく吹き、彼の髪をさらっていく。
「じゃあ、皐月」
遠慮がちに口にすると、『オッケー』ニカッと笑い指で丸を作った。軟骨ピアスが光で濡れたような、艶やかな輝きを放つ。
「見えてきましたね、コンビニ」
「案外遠いよなあ」
コンビニがあると分かった途端歩くペースが速くなり、涼しい店内へと駆け足で入った。
「涼しーい!天国」
「ずっとここに居てえ!」
外とは雲泥の差の快適な店内に癒されつつ、皆さんのお昼ご飯を選んでいく。
「碧音はパンだろー、藍もサンドウィッチ」
皐月は慣れた様子で、まずはパンコーナーに。
迷うことなく商品を手に取るんだから、やはり仲間の好みは理解しきっているんだろう。パンを選び終わると、次に向かうはお弁当コーナー。
「皐月は何食べるんですか?」
「俺はー、肉だな肉!」
うん、とても皐月っぽい。
星渚さんはミートソーススパゲッティかな…………あ、当たった。
菜流の得意料理がミートソーススパゲッティで、たまに星渚さんに作ってあげていると嬉しそうに話していたから。味がどうかは別として。
菜流は何せ料理が不得手なのだ。でも星渚さんにとったら、関係無いんだろうな。