キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】


「どこ行くんだ?前半のライブ始まるけど」


「コンビニで飲み物買ってくるわ」


「あ、俺はミネラルウォーターがいいなぁお願い」


「へいへい」


皐月はライブハウスの近くにあるコンビニへ向かって行った。


自分達の出番までは時間がある。集中力を高めつつ時間が過ぎるのを待つ。


頭の中で曲を再生し、シミュレーション。


春に観てもらえる初のライブということもあって体に力が入ってしまうが、いつも通りにと自分に言い聞かせた。


ライブも始まり、1組目の演奏スタート。明日歌ちゃんと春、楽しんでるかな。


ここに来る前から緊張気味だった春を思い出すと笑えてしまう。


「ん?」


碧音が星渚のバッグを見て眉根を寄せた。


「あいつさっきコンビニ行った、よな」


「行ったね」


「それがどうかしたか?」


「財布、持ってたっけ?」


財布……数分前の皐月の姿を思い浮かべる。手に持っていたのは携帯と……、携帯だけだ。


< 310 / 579 >

この作品をシェア

pagetop