キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
皐月の財布をポケットに押し込み受付を通り過ぎて、外に出る。
ライブも始まったから今外にいる人間は殆どいない。
空には星すら浮かんでなくて、厚い雲に覆われている。星は見えない、か。
あいつ、ほんと頭のネジ緩んでるよな。何で1番大事な財布を忘れてくの。
今頃財布忘れたことに気づいて店員にすみません!とか謝ってたらそれはそれで笑えるけど。
暫くはこのネタでいじってやろう。
暗がりの中数百メートル先にあるコンビニを目指そうとしたら。
「つーかまえた」
「――……っ!!」
不気味で耳障りな声に気づきハッとして後ろを見ても、手遅れで。
横からスルリと音もなく黒い手が何本も伸びてきて、それで――――口を、塞がれた。