キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
ガサガサとカゴを揺らしながらレジへ持っていき、店員さんにお会計をしてもらう。
皐月の手に取ったお財布がセンスの良い柄でお洒落だなあ、と感心。
お会計が済んでも、また暑い外に出るのかと思うとなかなか足が進まず店内にもうちょっといようとしたら『行くしかねえんだよ!天国からおさらばだ』と引きずられ、もわっとした空気の中に舞い戻った。
「あー腹減った今食いてえ!」
「お行儀悪いですよ」
「失笑、みたいな顔すんなアホ」
「これ碧音君の顔真似してみたんですけど、分かりました?」
「分かるか!微塵も似てなかったわ。え、お前いきなりだな。いきなりもの真似大会し出したな!ついでに、碧音はもっと見下した目ぇするぞ」
似てないことは百も承知だあんな綺麗顔の物まねなんて元から出来ないって知ってたけどやってみたかった。
「明日歌といると根こそぎ体力奪われる」
「まさか」
皐月は服を摘まみパタパタ空気を入れ、少しでも涼しくしようと試みている。
私も手で顔に向かい仰いでみるも、腕が疲れて止めた。この時間帯に来るっていうのが、まずダメだったのだ。
「皐月さ……、皐月、荷物持ち代わります」
手を出し袋を頂戴、の合図。
「いいって。1袋だし」
「皐月ばっかりに持ってもらうわけにはいかないですよ。それこそ私、何のために来たんだっていう」
恐らく星渚さんは、荷物が多くなった時のために2人で買い出しに行かせたんだろうけど、生憎1袋だけ。しかし、軽いとしても気持ちの部分で申し訳ない。
「俺のプライドが許さねえ」
「えぇ、でも」
「でももクソもないんだよ。大人しくしてろ」
「…………お願いします」
男のプライド的なものがあるのか、よく分からない。
「そうだ、ゲームしましょうよ。そしたら少しは暑さが気にならないかもしれません!で、負けたらジュース奢りってことで」
「普通、この状況では明日歌が奢るって相場は決まってんだろ」
ああ、きっと女子が『お疲れ様っ』と言い男の頬に冷たい缶を押し当てちゃうやつかな?青春だ、やりたい。ぜひとも碧音君に。
「つまらないじゃないですか、それじゃ。ゲームで勝ち取った方が美味しく感じますよ」
「おっしゃ。手加減しないかんな!で、何のゲーム?」
「リズムに合わせて記憶ゲームです。例えばスポーツ縛りなら、私が『テニス』って言います。その後皐月さんは『テニス、バスケット』って私が言った単語を先に言ってから自分の答えをいいます」
「あーなるほどな!で、ちゃんと全部言えなくてつっかかった方が負けってことか!」