キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
いちいち出入りする人の顔なんか覚えてる暇ないだろうけど、誰かしら知ってるはず。
「すみません、midnightの刹那碧音っていう背がこのくらいで黒髪の男見ませんでした?服装は俺と同じです」
「私はちょっと……、ねえ見た?」
「見たような、見てないような」
曖昧な答えはあてにならない。皐月と藍に電話してみるかと半ば諦めていた時。
「俺、見ましたよ!ファンなので会った瞬間興奮しちゃって、目で追ってました」
「刹那が外に出てったとこしか見てないですか?」
「はい!」
「助かった。ありがとうございます」
なら外にいる可能性が高い。でも関係者しか使えないドアの方からも出入りしてることも考えられるから何とも言えない状況。
…………そっちに行ってみよう。
床を蹴って、踵を返した。