キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「今控え室に戻ったら碧音がいるかもしれないし、メールが本当ならギリギリ帰ってくるさ」
浮かない顔で言われても説得力がねえよ。
「……刹那が戻ってこなかった場合、皐月と藍でライブに出る。俺は刹那を探す」
星渚が下したのは、苦渋の決断だった。俺達の周りだけ空気がひたすら重い。
「分かってる。1番いい方法はそれだもんな」
ライブを当日、しかも十数分前になって出られませんなんて無理に決まってる。
今日はせっかく波江さんが来てるから藍が出ないわけにはいかないし、ドラムの星渚じゃなくてベースの俺が出ないと曲にならない。
「俺が、財布忘れなきゃこうはならなかった」
ちゃんと確認して自分で財布を持っていたら。
「皐月だけのせいじゃない。刹那を行かせたのは俺と藍」
どうしてこうなった、後悔の色が全員の顔に浮かんでる。