キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「そうです!さっそくやりましょうか。縛りは『夏といえば』でどうです?」
「よっしゃ。どっちから先に言う?」
「皐月さんからで!」
「負けねぇからな。いくぜ、夏といえば花火!」
「夏といえば花火、スイカ!」
「なーつと言えば花火、スイカ、アイス!」
なかなかいいリズムでテンポよく続いていく。皐月はまだまだ余裕って感じで全く言葉に詰まらない。頭の回転が速いんだな。
「えーっと、花火、スイカ、アイス、浴衣、夏祭り、プール……っカキ氷、セミ」
「お?ギブか?」
皐月がニヤニヤと挑発してくる。まだ負けるわけにはいかないんだ!私の方が若いんだから。
「セミ、海、水着!!よし!」
「明日歌お前顔面すごいことになってんぞ。なーつと言えば」
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「ま、負けた!」
「はい俺の勝ちな」
悔しい、まさか自分が負けることになるとは。皐月の記憶力と瞬発力を侮っていた。最後に私が言葉の続きを言えなくてゲームオーバー。
「さあ奢れ。俺にジュースを献上しろ!」
「分かりましたよ……」
渋々財布から小銭を取り出し、150円を投入。
「どれにすっかなぁー。アイスコーヒーか、炭酸かー」
勝負に勝てたことが余程嬉しいようで、満面の笑みで好みのジュースを選ぶ皐月。
「……決めた、これだな!」
ボタンを押しガコン、落下してきたペットボトルの飲み物は透明な液体のサイダー。
「うお!冷てー。めっちゃ冷えてるぞこれ」
「当たり前です」
自販機から出てきたジュースが、逆に冷たくなきゃびっくりだ。
皐月が私に見せつけるようにキャップを開けると、あの特有のプシュッという炭酸の抜けた音が鳴るだけで、羨ましく思えてくる。
皐月は水分を補給出来て歩くペースが当然の如く早くなるが、私は随分足が重くなった。
「美味しそうに飲むから余計悔しいです」
「俺に勝負を挑んできたお前が悪い」