キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】


家にもいないとなると……嫌な予感がする。


誘拐された?事件に巻き込まれた?


刹那、綺麗な顔してるから女と間違えられて連れ去られた可能性も正直否定できない。


警察、って単語が頭を過ったけどそれは無理がある。


向こうからメールがきてた以上連絡がとれなくはないと判断されるだろうし、こんな程度で動いてくれないってことは俺でも知ってる。


「……はーぁ」


そろそろライブも終わった頃か、ライブハウスに戻ろう。足どり重く来た道を歩き、入り口に行くと。


「ん?」


スタッフやバンドが出入りするドアの前に数人の男がいて、近づいて目を凝らすとそれはBLACKだった。


向こうも俺に気づいたのか少し振り向いて、そそくさと中に入っていってしまう。


顔色を変えてビクッとした奴が1人いたのは気になるけど。控え室に行けば楽器を片づけてる皐月と藍がいた。


「ライブ、どうだった?」


「観客の反応もまあまあ良かったぜ。な、藍」


「どうなることかと思ったけど、成功して安心した」


「お疲れさま」


2人を労う。


「で、碧音は見つからなかったのか」


「家にも電話して確かめたけど、いないってさ」


藍と皐月の表情が曇る。


「……ここから出よ」



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