キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】



「さっき、『探し物ですか?』って言いましたよね。俺達を見て、なんでその台詞が出てきたんですか?俺達が何かを探してるって、分かってたからじゃないのか」


藍も普段の柔らかい雰囲気は欠片もない。藍の言葉に、一番後ろにいた男が息をのんだのが分かった。


「それに、君達4人ともその靴どうしたの?汚れてるね」


「昨日雨が降ってたじゃないですか?だから汚れてしまったみたいです」


「でも俺達に挨拶にきたときは汚れてなかったよ。で、今は全員土で汚れてる。何してたの?」


3人でライトで照らしたら分かった靴の汚れ。ライブで汚れるはずがない。


「はっきり聞くよ。刹那の居場所、知ってるんじゃない?」


自分の声が薄暗い空間で響く。


「……いいがかりはよしてください」


まだとぼけるつもりか、と問い詰めようとしたとき—――この空間には似つかわしくない着信音が響いた。


それは碧音が設定していた曲で、音が聞こえてくるのはBLACKの深緑のピアスをした男のポケットからだった。


「今、俺が碧音に電話をかけてみました。その受信音が、どうしてあなたから聞こえるんですか」


藍が『着信中』と表示された画面を見せつけると、今まで全く隙を見せなかった男の表情が変わった。


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