キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
俺達の会話を耳にしていてもBLACKは無反応。
次第に大きくなっていく違和感を胸にとどめつつ皐月の案内でその物置小屋に向かう。
けど暗闇に目が慣れていても足元が不安定になるくらい一切明かりのない場所で、小屋があることすらここからじゃ分からない。
携帯の明かりをたよりに進んでいくと、確かに夜空よりも黒い色で鎮座する古びた小さな小屋があった。
使わなくなった機材を保管する場所にでもしてるかもしれない。
「っ刹那!」
小屋に刹那がいるっていう俺らの推測が正しければ、コンビニの時に捕まえられてから数時間は経ってる。
刹那にはこれが何十時間にも感じられるはず。
急いで中に入ろうとしても扉に鍵がかかっていて。
「おいお前ら鍵持ってんだろ!渡せよ」
皐月が声を荒げた瞬間。
—――まさ、か。
「……っはは」
リーダーの男が、肩を揺らして笑ったのだ。
「鍵ですかー。鍵ねえ」
「……まさか」
「その、まさかですよ紀藤さん」
つまり、鍵を持ってないと。男の余裕そうな態度からしてこいつは持ってない、じゃあ他の奴らはと皐月と藍で探してもない。